最近の子供はあまり笑わなくなったような印象をどことなく持っていたのだが、そうではないことに気付いた。最近までNHKの「うたのお兄さん」で人気を博していた杉田あきひろの吹奏楽団とのコンサートを聞きに行った時のことだ。会場は子供連れのお母さんたちでいっぱいで、幕が上がるまでは子供たちはおかまいなしに飛び歩いている。ところが、コンサートが始まったとたん、どの子供も本当に嬉しそうな顔をして歌を聴き、知っている曲は大きな声で一緒に歌っている。天使のように輝いた嬉しそうな顔があちこちに見える。なぜだろう、としばらく聞いていて一つ気がついた。ステージにいる杉田あきひろが、実に楽しそうに、嬉しそうに歌っているのである。「うたのお兄さん」だから子供の心をつかむのは当然のことかも知れないが、これがなかなか難しい。
というのは、いろいろなステージでうまい人の歌を聞く。その中で、自分が歌うことだけが楽しくて、本人が酔いしれてしまい、観客が不在になってしまうステージもある。しかし、彼が嬉しそうに歌っているのは、本当に子供が好きで、その子供の心が彼の中に入り、それを表現しているからなのだ、ということがわかった。歌を通じてステージの子供と彼が心のやりとりをしているのである。難しい言葉ではなく、簡単な、しかも楽しく美しい音楽で、彼は子供を楽しませ、親も楽しませ、自分も楽しんでいる。愛情に溢れた会話をしている。それが実に楽しかった。舞台芸術でよく「舞台と観客が一つになる」という表現をすることがあるが、まさにそういうコンサートだった。
久し振りにあんなに楽しそうな子供たちの顔を見た。それが嬉しかった。子供だって、良いものはわかるのだ。いや、一番敏感なのは子供かも知れない。