観客席から〜第4話〜



第4話「芸について その1」

 「芸」という、かたちのないものに関わる仕事をしていると、余計に「芸」について考えることが多い。足りない頭をひねってみたところで、先人たちが苦しみながら築いてきたものの本質を言い当てることなどできはしない。ただ、私なりに考えることに決して倦みはしない。それほどに奥の深いものだからだろう。

 「芸は人なり」と誰かが言った。なるほどなぁ、と思う。プライベートで知っている俳優の人柄が舞台に出ることがある。ピュアな魂であったり、礼儀正しさであったり、暖かさであったり。そういう時は嬉しさを感じるが、その逆を目の当たりにすると、なんだか胸がふさがったような想いになることもある。

 役者は舞台で勝負する。となれば、役者が舞台で見せるものがすなわち「芸」である、と簡単には片付かないところが曲者だ。舞台に立っていても「芸」のない役者は多い。芝居がうまい? そんなレベルのものではないだろう。さあ、考えれば考えるほどわからなくなって来る。結句、答えは永遠に出ない問題なのかも知れない。しかし、私なりの答えは持っている。それは、今までの経験と先人の教えから学んで来たことだ。その答えはもうしばらく先に。 もったいぶるな? そう急がないでください。世阿弥も言ったでしょ、「秘すれば花なり」と。

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