観客席から〜第8話〜



第8話  「ミュージカル・ナンバー」

 日本で初めてブロードウェイ・ミュージカルが上演されてから四十年が過ぎ、今やミュージカルの元気はすごい。アメリカやイギリスの作品が続々と上演され、再演を繰り返し、大きな一つの演劇のジャンルを成し遂げている。

 日本でミュージカルが急速に発展した理由は二つあると私は考えている。一つは、劇団四季による「キャッツ」の千回を超える精力的な上演で、今まで劇場に足を運ばなかった層を演劇ファンにしたこと。もう一つは、東宝が敏感にアンテナを張って熱心にミュージカルを上演し、スターを育てたこと。この二つにより、日本のミュージカル・ファンは爆発的に増えた。もっとも、ミュージカル・スターの多くが元四季と元宝塚というのが面白い。

 有名なミュージカル作品を挙げて行けば、枚挙にいとまがないが、観客の誰しもが、その中に必ずお気に入りのミュージカル・ナンバーを一曲は持っているだろう。その一曲は必ずしも作品の顔になるような有名な曲でなくともよい。言ってみれば「心にしみる一曲」が、観客の中に残れば、そのミュージカルには存在価値があると言ってもよいだろう。私にも好きなナンバーがたくさんあり、どれとナンバー・ワンを決めるのが難しいほどだ。

 ミュージカル・ブームはまだまだ続く。これからも多くの作品が上演され、演劇史の一幕を飾って行くことになるだろう。そんな中で、幕が閉まって劇場を出、家路に着いた時にふと口から出て来るようなメロディーを持った作品が、本物のミュージカルではないだろうか。

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