観客席から〜第20話〜



第20話「役者と話す(2)甲斐政彦さん」

 注目を浴びている劇団の一つ、Studio Life。「イケメン」の男性ばかりを集めた劇団で、若い女性に人気が高い。この劇団の中核を担う甲斐政彦さん。端正な顔に鍛え上げられた肉体、役を掘り下げた演技に対する支持は多い。彼との付き合いはどの位になるだろう。舞台を降りても芝居に対する想いを熱く語る彼の姿は、いつも眩しい。

 彼には、役者としての顔の他に演出家としての顔もある。今月19日に中野のウエストエンドスタジオで幕を開ける「ジリアンへ、37歳の誕生日に−」。この舞台で彼は役者と演出家、二つの顔を見せる。亡き妻の面影を追い、亡き妻との対話の中で自己を見出していく、ストレート・プレイだ。「久し振りの外部出演で、演出も兼ねます。この芝居では五感を大切にしたいですね。舞台は海辺の別荘なんですが、そこに吹く風のゆらぎや寄せては返す波の音、潮の匂い。太陽の光。その中で生きる人間の姿を描きたいです」。

 澄んだ眼差しでじっと私を見つめ、柔らかながらも力の漲った声でそう彼は語る。今までに観て来た彼の役柄にはないものかも知れない。しかし、劇団を離れての他流試合は役者の成長には欠かせないものだ。大いに苦しみ、力を発揮してほしい。その成果を、僕は「批評」という形で世に語る。これは二人の闘いだ。

 実は、彼と「ある芝居」の上演を計画している。僕が演出家に回り、彼が舞台に立つ。二人が共通して惚れぬいている作品だ。上演時期は未定だが、絶対にやる。それまで、二人の闘いは続く。

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