観客席から〜第23話〜



第23話「役者と話す(3)戸井勝海さん」

 鮨をつまみながら、気がつくと時計の日付が変わっていた。芝居の話をし始めると、時間を忘れる。戸井君との付き合いはいつ頃からだっただろうか。国民的ミュージカル「レ・ミゼラブル」のマリウスで颯爽と登場した彼は、ミュージカルはもちろん、ストレート・プレイでもめきめき頭角を現わして来た。静かな二枚目かと思っていたら、お酒が入ると三枚目のキャラクターで、そのギャップが面白い。でも、芝居の話になると、熱い。

 「もう今年でデビュー10年なんですよ。早いですね」

 「役者なんて一生ものだよ。まだまだこれからやらなくてはならない仕事も勉強もお互い山積み。頑張ろうって」

 そんな彼が、デビュー10年を記念して、来月記念コンサートをやると言う。

 「曲目は何がいいですかねぇ」

 「あれも入れたいし、これも聴きたいなぁ」勝手なリクエストを出しては戸井君を困らせている。21日の土曜日に第一ホテルシーフォートで2回、翌日の日曜日には早朝の新幹線に飛び乗り、兵庫の宝塚ホテルでもショーをやるとのこと。

 「ずいぶんハードなスケジュールだね。でも、100%の戸井勝海の魅力を見せないとね」

 「燃えてますよ!」

 目がパッと輝いて、役者の目になった。役者はステージで100%完全燃焼することに意味がある。自信、というのもニュアンスが違うが、「やる気」の強いオーラが感じられた。久し振りに新幹線で宝塚へ行ってみようか。

 「ダメ出しをよろしくお願いします!」

 こういう人は憎めない。

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