観客席から〜第25話〜



第25話「小さな光」

 演劇界には綺羅星のごとくスターがいて、舞台を彩っている。大きな劇場でまさしく星のように光を放ち、観客の喝采を浴びる。誰もがそれを夢見て役者の道を志すのだろう。それは悪いことではないが、スターだけでは芝居ができないは周知の事実だ。小道具や大道具、制作などの裏方はもちろん、舞台の上の俳優たちもスターを支えている。自分が次にその役を演じることを夢見ながら。しかし、そこには並々ならぬ苦労がつきまとう。一生陽の目を浴びずに終わってしまう俳優もいるし、ひょんなことからスターの座を射止める者もいる。「運」と言ってしまえばそれまでだが、それに負けない「努力」がある。

 主役の演技をじっと見つめ、いつでも代役ができるように研究している者、舞台が休みの月は踊りや邦楽、ダンスや声楽などの稽古に励む者、他の役者の芝居を貪婪に吸収しようとする者。昔から良く「役者の乞食袋」という。何でもかんでもその袋の中に詰めて、それを自分の糧にして、必要な時に引っ張り出す。今、「乞食袋」を持っている役者が少なくなったように思うのは気のせいだろうか。突然人気が出て舞台を演じても、歩き方はおろか、着物も満足に着られないものがいる。そういう人もいる中で、せっせと自分の「乞食袋」に物を詰めている役者たちがいる。こういう人が舞台で見せる力は本物だ。大スターではないが、「小さな光」が煌く。

 人気者ばかりに目がいくのは仕方がないが、芝居というものは、こういう「小さな光」が煌いている時が美しい。それに気がついてあげるのも、観客の一つの仕事ではないだろうか。

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