触ったわけではないのでわからないが、彼は体温が40度ぐらいあるのではないだろうか。とにかく「熱い」男である。「好漢」という言葉がぴったり来るような雰囲気を持っている。
こちらが聞きたいことが速射砲のように出て来る。どうして役者を目指したのか、JAC(現JAE)へ入ったいきさつ、アクション俳優としての道のり、映画「ラストサムライ」のこと…。彼にとって、生涯の師である千葉真一への想い、尊敬する先輩・真田広之の話。こんなに熱い想いを持っている役者がいることが嬉しい。自分が役者であることの意味。お互いに盃を重ねるごとに話が白熱する。役者と評論家。方法は違うが、演劇における表現者であることは二人とも同じである。時として究極の立場に立たねばならない人間同士が、こんなに熱く話せることは至福とも言える喜びである。
その最高潮の瞬間。彼が3月24日に南青山のライブハウスで開くデビュー20周年ライブの曲目に話が及んだ時に訪れた。彼が歌うのは、今までに出演したミュージカルの中から選んだものや、JACブラザーズというアイドルグループを組んでいた時代のものなど、俳優活動20年の総決算に当たるライブだと言う。そのレパートリーの中に、あるミュージカルの一曲があった。「これは僕の持ち歌ではないんですけど、この曲が僕は大好きなんです。なぜかと言うと…」という話をし始めた彼の眼に涙が滲んだ。それを聞いている僕も泣いた。僕が泣いたのは、そのミュージカルが一番好きな作品であり、その曲が僕の生き方を変えた曲でもあったからだ。大袈裟に言えば、二人の魂がこの瞬間に一つになった。
「総決算もいいけど、明日からの真矢武を観てもらえるようなライブにしなよ」との僕の言葉に大きくうなずき、がっちり握手をした彼は、満面の笑みを浮かべて夜の街に消えた。明日の舞台のことを考えて。