早ければこの秋にでも、「手作り」の本を出そうと考えている。装丁や造本などの詳細はまだ決めていないが、いずれにしてもそう多くは作れないので、200部ぐらいのものになりそうだ。内容が決まり次第、頒布の予定も考えているので、ご興味をお持ちいただいた方にはぜひ。と自己宣伝めくが、最近何に寄らず「手作り」に対する感心が高まっている。僕に言わせれば、昔に返っただけのことだが、芝居の本の手作りはまた違った事情があって、出版社から本を出しても今の時代では売れないのだ。だから、追々出費を覚悟で手作りをすることになる。
ここまで書いたら、今の演劇界に何やら話が似ているような気がしてきた。大掛かりな芝居はどこにでもあるが、「手作り」の芝居の何と少なくなってしまったことか。規模の大きい小さいではなくて、作り手の気持ちの問題だろう。今の時代に「ゆっくり時間をかけて」などと暢気なことを言うつもりもないが、気持ちだけは「手作り」を忘れないで芝居を作ってもらいたいと思う。粗製濫造の気味さえある中で、「本物」を生み出すことは生半の苦労ではない。特に、芸事というのは時間のかかるものだ。「今は時代が違う」と言われてしまえばそれまでだが、努力を怠らない本物は、必ず残る。それは、確信を持って言える。
誰しもいい芝居をしたいし、いい芝居を観たい。それがままならないのは、演劇界が多くの問題を抱えているからに他ならない。「歌舞伎が危機だ、と言われているうちは大丈夫だ。誰も何もいわなくなった時が一番怖い」と言った歌舞伎役者がいた。けだし名言、である。