良く「一番好きなミュージカル・ナンバーは何ですか」という質問を受けることがある。その度に答えに窮するのは、僕の心を揺さぶった名曲があまりに多いからである。その都度答えが変わることもあるが、「ラ・カージュ・オ・フォール」という日本でも人気のミュージカルの中の「私は私」というナンバーが好きだ。
この芝居はゲイの世界を扱った作品で、ゲイのショークラブの経営者と花形スターのザザの男同士の夫婦、その息子などの人間ドラマである。近藤正臣がこのザザを演じ、それから市村正親に変わったが、非常に質の高い、ハートフルな作品だ。その中でザザが、自分の生き方について唄うのがこの「私は私」。
「たとえ人から何を言われても後悔しない、あたしの人生だから。たった一度だけの人生、自分の好きなように生きる、それが私。ありのままの私を見てほしい、それが私…」そういう内容の曲で、メロディーも非常に素晴らしい。この曲が好きな人も多いだろうし、いろいろな人が折りに触れて唄っている。
この曲は役柄、ゲイであるザザが女装をして唄う。今までの苦労を水に流して、明日へ向かって突き進む、というメッセージは、いろんなことで壁にぶつかり、へたり込んでしまいそうになる僕を助けてくれた。辛くなると、この唄を口ずさんでは自分を鼓舞してきた想い出がある。それを真矢武が20周年記念コンサートで唄ってくれた。彼はこの芝居ではザザは演じておらず、ザザのメイド(?)のジャコヴという黒人の役である。しかし、間近に市村正親のザザを観ていて、このナンバーに痺れたと言う。この曲で彼の21年目が始まったと同時に、僕の2?数年目もまた歩み始めた。
真矢武と僕が共通して涙した曲、それは「私は私」だったのである。