観客席から〜第31話〜



第31話「方言」

 南北に長い日本は豊かな方言がみられる。方言で書かれた芝居も多く、役者を四苦八苦させているが、その分土地の匂いがして、また楽しいものだ。

 テレビなどで使われている「標準語」なる言葉がイコール東京の言葉、と思っておられる方も多いようだが、東京には東京の方言がある。私は、ヒギンズ教授のように立派な言語学者ではないので、偉そうなことは言えない。素人の与太話だと思っていただければ嬉しい。

東京の方言というと「あさししんぶん」ではないが、「はひふへほ」が「さしすせそ」になったり、「まっつぐ」などという言葉がすぐに思い浮かぶ。最近知ったことだが、言葉の頭に「いけ」をつけるのも東京の方言だと言う。いわく、「いけぞんざい」「いけ図々しい」「いけしゃあしゃあ」…。そう言われてみれば、知らずに使っていたっけ。

言葉は時代と共に、人と共に生きているものであり、どんどん変わって行く。それが言葉の宿命なのだろうが、以前問題になった「ら抜き言葉」や妙に語尾を上げる言葉のように、聞いていて耳障りな言葉もあるものだ。もっとも、それも宿命の範囲だ、と言われれば仕方がないのだろうか。

 文字で書くことができないのがもどかしいが、時代劇などを観ていても、アクセントがどうにもメチャメチャなものがある。よく話題になるのは「そなた」や「おやじ」だが、こういうことをうるさく言う人も最近は少なくなったような気がする。しかし、物を書く人間の一人として、言葉は大切にしたいものだ。それこそ、「いけぞんざい」には使えない。

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