別になぞなぞではない。映画の話。戦争に関する想いは人それぞれだろうが、地球上の今この瞬間、戦争が行われているのは事実であり、日本が約60年前に戦争を行ったのも事実である。
昭和36年に制作された「南の島に雪が降る」という映画がある。懐かしい加東大介という俳優が主演した戦争映画だが、これは実話だ。戦況が悪化していくばかりの南方で、疲弊している兵士たちを慰問するために、演芸会を催すことになった。それが好評で、本格的な劇場を建て、芝居の公演を打つ。軍隊にはさまざまな職業の人がいるから、元役者だの浪曲師、かつら屋などが集まり、だんだん本格的な劇場が出来上がっていく。みんな明日をも知れぬ命の中で、その劇場建設とこけら落としが楽しみで仕方がない。
こけら落としには、遠方にいる部隊も、瀕死の兵隊を戸板に乗せて大勢やってくる。舞台の上には、もう二度と見ることのかなわないであろう日本のふるさとの風景がある。無骨な兵隊が扮した女形が着物を着ている。おっかさんもいる。妹もいる。恋人も、奥さんも、兵隊の瞼の中に写っている。そう言えば、そこで上演される芝居は長谷川伸の「瞼の母」である。終幕、もう使うことのないパラシュートを刻んだ白い雪が降る。南方の暑い暑い島に。それを見て涙を流す兵士たち。
加東大介の経験をもとに書いた小説が大当たりし、映画になり、舞台にもなった。作者の加東大介は役者の一家で、姉はテレビや映画の名脇役だった沢村貞子である。この映画、森繁久彌、有島一郎、三木のり平、小林桂樹、渥美清、伴淳三郎など、錚々たる顔ぶれが揃っている。笑わせて泣かせる映画だが、戦争はこういうところにも暗い影を落としていたのだ。加東大介、好きな役者だった。