観客席から〜第49話〜



第49話「追悼・ポール牧さん」

 このコーナーでこういう哀しいことを書くとは予想だにしていませんでした。

 ポールさん、おつらかったのでしょうね。哀しかったのでしょうね。寂しかったのでしょうね。お付き合いのあった人間の一人として、そのお気持ちを察するに至らなかったこと、痛恨の想いです。無念、です。

 あなたとのお付き合いが始まった頃、一人芝居にとても興味を持っておられましたね。死刑囚の一人芝居が高い評価を得ていたこともあって、次回作に意欲満々でいらっしゃいました。「次は道元禅師のことを一人芝居にしたいんですよ。中村さん、書いてくださいね」と、明るい顔でグラスを傾けながらお話になっていたあなたの顔が今でも忘れられません。

 出家をされ、芸人としての仕事と同時に、僧道をも歩まれているあなたに道元禅師のことを書くなどとは畏れ多いとも思いましたが、何度か話をさせていただいて、「こんな話はどう?」「あの話もいれたいね」と目を輝かせて話しておられたのに。とうとうお約束を実現することができませんでした。申し訳ありません。でも、約束をしておいて先に逝かれてしまうのは、ずるいですよ。

 ポールさん、あなたはどんな時でも、嫌な顔一つせずに回りを盛り上げることに気を使う方でいらっしゃいましたね。そのナイーブなお気持ちが、今の荒んだ世の中を生きるのにはおつらかったのでしょうか。もうお話をすることができなくなってしまった今、あなたに一方的に語りかけることしかできなくなってしまいました。でも、あなたの笑顔を忘れることはないでしょう。安らかにお休みください。合掌。

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