時間の捉え方は人によって違う。この時間を長いと感じるか、短いと感じるか。その「長さ」の感覚もまちまちだろう。
俳優の仲代達矢が後進の育成を目的として私塾を創立し、今年でちょうどその活動が30年になるという。彼の輝かしい俳優人生の中での30年間、無名塾の塾生と共に歩んだ時間の中で、亡き夫人と共に佳作を残してきた。そして、現在、幾多の若い俳優が育っている。それは、この私塾を始めた仲代自身のみならず、育っている若者にも嬉しいことである。
その中で頭角を現わしている赤羽秀之という俳優が中心となって、塾生たちと「無名塾新聞」なるものを毎月一回発行している。A4判1枚の裏表、カラーのごく簡単なものだが、彼らの活動状況や、先輩たちのエピソードなど、盛りだくさんにぎっちり詰まっている。詰まっているのは文字だけではなく、彼らの「芝居に対するエネルギー」に他ならない。ファンクラブを作ろうだのという欲得ずくでなく、自分たちの手仕事に情熱を傾けている姿が嬉しい。
私事で恐縮だが、私も自分の意思で芝居を勉強しようと志して、気がついたら今年でちょうど30年経っていた。仕事の成果が伴っていないのが恥ずかしいが、無名塾と同じ時間だけは経っている。無名塾の青年たちの清新な心がけを見習って、僕も手仕事をすることにした。
幸い、好意的な編集者や応援してくださる方々がおられ、今までの小さな足跡を書いた本を自費出版することにした。どうせならばすべて書き下ろしで、と欲が出たが、今年の11月末には何とか刊行の目途をつけたいと思っている。無名塾に負けないだけの情熱は持っているつもりだが、さて、どうなるか。