モータースポーツに情熱を傾けている若者二人と遊んだ。芝居一辺倒で生きてきた人間にとって、異分野の話は興味が深い。二十代前半の青年が語る車の魅力。モータースポーツの面白さ。酔うほどに話に熱が籠もり、三人の体温が高くなっていく。
私は、非常に車が好き、というほどではない。運転も、お世辞にも巧いとは言えない。しかし、彼らが語る車の話が、こんなに面白いものだとは思わなかった。このコンビの息の合い方が、まるで漫才のようなのだが、素晴らしい掛け合いで笑わせる。若者同士が、お互いを認め合い、その一方で「負けるものか」という意識を持ち、車を愛する、という共通項で結ばれている。
一人が「車は官能的だ」と言った。初めて聴いた言葉である。彼いわく、エンジンが巧みなドライバーによって運転されている時に「奏でる」音はセクシーなのだ、と言う。もう一人は、「車は音楽だ」と言った。ドライバーによって同じ車でも奏でる音が違う。ストラディバリウスの名器が、演奏者によって奏でる音が違うのと同じ、である。
二人の話を聴いていると、一人は車に対してより高度な性能を追求する。もう一人は、その車の最大限の性能を引き出すドライバーである。芝居で言えば、劇作家・演出家と役者のコンビにも似ているような気がした。さしずめ、サーキットは彼らにとっての舞台、でもある。
二十年前の私が、芝居に対する限りない夢を語っていた頃のことをふと思い出した。今、自分がその夢をあんなに輝かしい眼で語れるかどうか。それが年を重ねる、ということでもあるのだが、彼らのピュアな情熱は、暑さにへたりかかっていた私の情熱を呼び覚ますきっかけになった。
今年の夏はまた猛暑だと言う。猛暑に負けない熱さ、で仕事をしたい。