どんな名優でも初舞台は経験する。その緊張や重圧たるや、常人の想像の域を超えたものであろう。いかな大ベテランの役者でも、初日の幕が開く前は極度の緊張にさらされると言う。
幕が開いてしまえば、芝居を途中で止めることはできない。充分に自分で稽古を重ねたつもりでも、予期せぬ事態は往々にして起こるものだ。しかし、役者である以上、いつかは経験し、そこからスタートするのだ。
先日、天王洲アイルのアートスフィアで、風間トオルさんが本格的な芝居の初舞台を踏んだ。失礼ながら、私と同じ年齢である。今までに、テレビや映画の映像分野でスターとしての地位を築いている彼が、今になって舞台に挑戦するということは、並々ならぬ決意があったことは想像に難くない。
嫌な言い方をすれば、別に舞台に進出しなくとも、今のスタンスで充分に仕事をこなしていける役者である。それでもあえて、舞台に挑戦した。同世代の人間として、この果敢なる挑戦に嬉しさを感じた。
元より初舞台である。完璧な演技は望むべくことではない。それは充分承知の上で、役者としての幅を広げるための試みであったのだろう。彼が、今後舞台活動に対してどういう姿勢で臨んでいくのかは知らない。しかし、ある意味で自分を試す可能性として厳しい道を選んだその姿勢は頼もしい。
彼の舞台俳優としての評価は未知数である。しかし、その気概は買う。今の状況に安住することは簡単だ。諸先輩が並み居る舞台の世界へ、今飛び出したことがその決意、なのだろうと思う。
正直な話、まだ舞台俳優としての演技を評価し、云々する段階ではない。しかし、彼が舞台に興味を示し、覚悟を持って舞台に立った、ということでその面白さも怖さも感じているだろう。次に、どこでどういう舞台を踏むのか、初舞台を踏んだ彼の意欲が発揮できるような機会、それまでの研鑽が楽しみになってきた。